好調の税理士
こうしてDはジャスダック上場を果たし、それまで以上の資金調達力を獲得。
さらに拡大軌道を驀進する、推進力を得たのである。
最近、上場した不動産企業はちょっとした、台風の目といった存在になっている。
平成16年6月、そろって黒字に転じた大手行のなかで、UF銀行のみが大幅赤字を計上した。
その元凶の一つが、マンション業界最大手の「D」の巨額負債であることは周知の事実である。
Dだけが特別なのではない。
バブル期に大規模事業を展開していた大手企業ほど、深い傷を負っている。
これが、日本の不動産業界の、偽らざる現状なのだ。
しかし、ここ数年で上場を果たした新生企業は、バブルの傷とは無縁である。
むしろ、バブル崩壊後の地価下落などの追い風を受けて、元気いっぱいの事業展開を、積極果敢に行っている。
しかも、過去の価値観から解放された新しい不動産価値にもとづき、新鮮な感度をアンテナに、たしかな市場性に立脚したビジネスを展開しているのだ。
少し目のある投資家なら、こうした企業には積極的な投資を惜しまないはずである。
Dはその代表格といえるだろう。
そのためか、株価の動きも活発である。
先進性のある企画力を評価されてか、新しい株のトレーダー、ネット経由の取引も盛んだという。
それだけ、先端的な価値観をもつ投資家の心をつかんでいるということだ。
平成16年に入り、ジャスダックの貸借取引、いわゆる信用取引銘柄としての認定も受けた。
Dの最近の企業活動を詳覧すれば、投資家たちはさすがに鋭い目で、企業活動をチェックしているものだと感嘆させられる。
こうした株主からの熱い視線を意識するたびに、Nは、全社員に檄を飛ばす。
「毎日の株価の動きはそのまま、仕事を取り巻く環境が日々、変わっていることを示すものだ。
常にそれに対して、挑戦するような心構えで仕事に挑んでほしい」そして、同じメッセージを誰よりも強く、自分自身に送っているという。
「大事なのは、常に危機意識をもつことです。
特に、経営がうまくいっているように感じるときほど、いっそうシビアな危機意識をもっていないと、自分の慢心に足元をさらわれかねません。
危機意識をもちながら、日々変わる環境に対して、常に挑戦していく。
その気概を失うことがなければ、企業の成長力が落ちることはないと確信しています」ちょうど10年前、Nは人生でもっとも苦しい時期を過ごしていた。
だが、その苦しい時期があったからこそ、上場を果たした後、そして急成長を遂げている現在も、危機意識という言葉を忘れないのだろう。
倒産、自己破産という体験は、Nにとって、経営者としてもっとも重要なことを強く、深く刻み込んだ、価値ある体験だったのである。
Dが自社開発物件を取り扱いはじめたころ、東京のマンション供給状況はどうなっていただろうか。
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